塀の中からの手紙
溢れんばかりになっているポストの中身を引っこ抜くと、服役中の内縁者(他称)から手紙が来ていた。
書いてあったのは
- 近況
- 仮釈放の身元引受人の事
- 出所後の事
引受人=同居、だと聞いていたので、保留にしてある。
…んだが、同居は必須条件ではなく、“ひとまず泊めてもらう”で構わないのだから、保留処置は撤回して欲しいらしい。
“泊ま(られ)る”こと自体が嫌じゃと言っとるんだ。
パクられるまで住んでた所を借りておいて欲しいと云う。(帰省地にしてあるらしい)
多少の金銭的援助と、支えをお願いしたいと云う。(返却意思あり)
二度と迷惑を掛けないと云う。(意味不明)
塀の中の時間はゆっくりゆっくり流れる。こちらの速さとは雲泥の差だ。
制約と規制の中で早5年間。
失声症になりながら、懲罰を受けたりしながら、一日数百円を稼いでいる。
『時を無駄にしないように生きていきたい。』
『どんな事かはわからないけど、お互いが幸せになる道を見つけたい』
いろんな人に会い、いろんな事を学んだと云う。
待つ人が居るというだけで、ものすごく強くなれる気がすると云う。
シャバに出てから適応できるかどうか不安だと云う。
直接話せないのがもどかしいと云う。
もう望むような形では待ってはいないと伝えたはずだ。
おそらく自分よりも厚い人間になっているのだろう。
刑務所での面会時間は15分。話し尽くせる過去では無いし、話し合える未来は無い。
出所は満期で来年の6月。
自分はどんな状況にいるだろうか。
何をしているだろうか。