屋根の葺き替え打ち合わせ

仕事から帰ってくると門の前に不審な人影がウロウロ。思わず立ち止まる。
相手もこちらに気づいて動きを止める。近づいてくる。
あぁ、屋根の葺き替えの打ち合わせを頼んでいたのをすっかり忘れていた。
自宅には他人様と過ごせるようなスペースが無い為、近くのファミレスに向かう。


簡単な見積書を見たりセールスを受けたり。
入社3年目と言う若い兄さんは、覇気は買うものの中途半端な敬語がやや耳障り。
まぁ人の事は言えませんが。
こちらの質問に対し職場に問い合わせを繰りかえす。
「怒られちゃいました」
「…怒られてください」
そうですね仕事ですからねと頭を掻く。
予算を聞き出そうと粘り埒が明かないので、出せそうな金額を告げる。
案の定、その額に沿った見積もりを書き上げた。
何が最良か一緒に考えますと意気込むので、
「なら予算が半額として、同じ事をしたいと依頼したらどんなプランを立てます?」
「えっとぉ。…それは意地悪ですよ」
素直な質問だったのだが。


葺き替えに際しての注文は、
・同じ材を使うこと
・可能ならば一部はそのまま残すこと
・家自体より先に再度屋根がヘタらないこと

取りあえずは全面葺き替えと一部残しの2枚、見積もりを作ってもらう。



本来なら父親の交友関係上その手の業者は選り取りみどり。外部に依頼する必要は無いんだが、所詮父の知人。当人が死んだ今となっては連絡も取りづらく、勝手な時ばかり頼るのはムシが良すぎる。
ただ、今回は改築と言えなくも無い施工。流石に一言知らせずばなるまい。
後々になって不義理を責められても切ないし、なにより後味が悪い。
「増築の時や屋根の塗り替えの時に頼んだ人達にも連絡を取ります。他の業者にも見積もりを依頼するかもしれません。」
と話すと、決算の関係上即決を予定していた営業さんはあからさまに落胆した。


「ぶっちゃけた話、当社に頼んでいただける確率はどのくらいあります?」
「どの位の数字なら安心します?」
「…。」
困るなよ。
95%と言おうが10%と言おうが結局は○か×かなんだから大して変わらんだろうと思うんだが。営業さん曰く、
「ごじゅっぱーせんと、くらいですかねぇ」
そ、そうなの?そんでいいの?


ダメージを受けたらしい彼は、次いですっかり悲観的になってしまい、
「僕は精一杯やりました。悔いは有りません」
と肩を落とし、
「それでも皆さんの家の為に一生懸命頑張りたいと思う気持ちは誰にも負けませんから」
と、そぼ降る雨の中、爽やかに帰って行った。
…風邪引くなよ。