仕事から帰り水槽代わりの衣装ケースを覗くと違和感が。ヒーターがズレ上がり気配がしない。スッポニーが居ないのである。
*1
預かった当時のまま衣装ケースで飼っているが、体も大きくなり立ち上がればケースの縁に届くほどになっており、一度は脱走未遂を起こしていたのだから注意が必要だったのに迂闊だった。床はすっかり乾いており這い出た跡などとっくに消えている。
猫が外に出ていて良かった。


水生だが肺呼吸でありイルカほど乾燥に弱いわけでも無い(はず)だが、水生である以上は水中の方が生き易いのだろうから、一大事なことに変わりは無い。
体型的に高い段差は超えられないし(脱走はしたけど)性質的に潜りたがりだから、行かれる範囲は限られていると信じて探し始める。
鳥ほど行動範囲が広くないが足元に潜っているかも知れないのだから摺り足になる。


最も恐ろしかったのは風呂場。炊き釜の下にでも入られていたら例え居ることが分かっても出す術が無い。呼んだって来てくれないし手は入らないし。
懐中電灯を使おうとしたら電池が入っていない。運に見放されては居なかったらしく探し物がし辛い我が家にあって目的サイズの未使用電池が間もなく見つかった。
手鏡を使い見られる範囲照らしてみても姿は見えず。一抹の不安を抱えつつ別所に移る。


慌て返っているので一所にじっくり居られずイタヅラに右往左往してしまう。
同じ所を何度も探し、体重を考えれば重いものの下になぞ潜れないのに本を除けてみたり隙間なんて無いのにゴミ箱をずらしてみたりし、その度に苦笑する。


そして。
稼動範囲内で最も遠い部屋の床に散らばった服の下を持ち上げた時。
捜し求めていた甲羅が埃にまみれて現れたのである。
首を引っ込めた姿のまま動かない。あれだけ周りが騒がしく絶え間ない振動があったのだから警戒心の強いスッポンのこと。生きていても動けるはずが無いのだ。
恐る恐る掴みあげる。
動いた。
大きく溜息が出た。そっと水で埃を流し、ゆっくり住処へ戻す。


…速い速いはやいっ 物凄い勢いで反対側の壁に突進し、それでもなお壁を掻き続けている。
これ以上のサイズの衣装ケースだと滑車付きになり内容が重い用途には不向き。
水槽を買う時が来てしまったようだ。

*1:スッポニー:預かりもののキタインドハコスッポンに勝手に名前をつけた。5年目になるだろうか