野狐禅*1 は何故“狐”か。

仏教の元はインド。インドにおける狐の地位とは?何の象徴として使われるのか?

  • 無門関・第1則・趙州狗子*1の、狗(犬)は、どうも単なる「畜生」(人間以外の動物?)の代名詞らしい。
  • 無門関・第14則・南泉斬猫*2の、猫は“人間の根強い所有欲そのもの、自我の執着”の象徴と解されるとしている。内容からすると、別に猫ではなくてモグラでも亀でも良さそうだ。(浦島太郎は禅問答だったのかぁ…って違うな。)

さて。狐。

  • 無門関・第2則・百丈野狐では「似て非なる邪禅」を指していう言葉だそうな。

狐が狐に安住して他を羨まぬときを「仏」というのです。人が人に満足せずして他に求めてやまぬ時を「狐」と言うのです。ここを「ただ因果のみあって人なし」とも言うのです。【宗教法人・保壽院

ヘボなことを言ったが為に500年も狐にされたと苦しむんじゃなく、狐なら狐として500年を楽しむことも出来たはず。人間>狐 という観念を捨てましょう。って話。(そうかぁ?)【宗教法人・保壽院のメインサイトこちら

宗旦狐では、侘び茶の名匠に化けた狐が、狐と知られながらも暖かく迎えられる。京都の相国寺に宗旦稲荷として祀られてる。…え?稲荷って神社じゃないのか。神社って神道だと思ってた。あれ?→“日本仏教”特有の習合らしい。神様も拝んじゃうらしい【神道と仏教】。…日本って折衷上手。化ける動物ったら狸だっていいじゃん。でも祀られるのは狐。狸が化けるのは日本だけ?
狐が化けるようになったのは中国の影響だという説もある。それまでは純粋に神の使いだったんだって。…でもその神って中国から来たんじゃないの?順序がよく分からん。
アイヌでの黒狐(居るの?)は岬の守護神だそうだ。キタキツネはガンガン狩って良いらしい。
稲荷は字の如しで五穀豊穣の神だとか。人に憑依する狐は多くが豊川稲荷の眷属らしい。ほほー。血統(?)によって得て不得手があるのね。ってそれはちょっと置いといて。
中国の『三才図絵』に黒狐ってのが居る。北山の神獣で、王者が太平をもたらした時に姿を現すらしい。黒は北だから、北斗七星の化身ともされるらしい。…玄武の友達?
中国の『山海経』には狐をベースにした霊獣・幻獣(日本に来ると“妖怪”かな)が多い。
九尾狐 は天下太平・子孫繁栄。ちなみに金色の奴は インドでは華陽(カヨウ)婦人、中国では姐妃、褒ジ、日本では玉藻前の名を持つ傾城の妖女。
狐のようで九つの尾、九つの首、虎の爪をもつリョウシツ(‘龍の下に虫’に蛭と書く:字が出ない)ってのもいて、これは人を食う。
実際、狐によく似ているが10頭程度で狩りをするドールという動物が居る。生息地はアジア。インドにも中国にも生息する。そして同じような大きさで屍肉を漁るジャッカルが居る。こいつはインドには居るが中国には居ない。動物学者じゃないんだから、イッパ一絡げで“狐”と括ったとしても不思議じゃないかも。(アザラシも“狐”で表しちゃうんだから、アリだと思う。ちなみに、『山海経』での“狸”は、絵だけ見ると猫に近い。)
お稲荷さんと狐はインドのジャッカルとダーキニが変遷したものらしい。【『山海経』動物記
その変遷と、すり替わりの経緯は【弁財天と荼吉尼天】や【お稲荷さんについて】にも詳しい。「本地垂迹説」と云うらしい。
あ、なんか繋がってきた気がする。でもなんかまだイメージがずれてる。
インドの古典舞踊で表現する手の動きでは、日本の狐がインドでだと鹿になるらしい。飛躍が大きいなぁ。まぁ、尖がった顔は似てるかもしれないけど。目立つ部分は尻尾と角とで全然違うじゃん。…閑話休題
民話の中でも、『“前世の行いが悪かったから”狐(や他の動物)になった』って記述がある。
荼吉尼の使い狐(実際ははジャッカルらしいが)には修行があって、その期間の長さで、野狐*3管狐・飯綱*4天狐*5銀狐*6金狐*7空狐*8と出世(?)していくらしい。白狐はどの辺に入るの?別格?にしても和製っぽいなぁ。これの野狐が、ダイレクトに野狐禅にまで適用されてるのか?にしちゃぁちょっと意味合いが違うような。

子育てや餌取りなどの関係で山と里とを行き来する様子が、山の神(奥さんではアリマセン)との連絡役をイメージさせたのかなぁ。
でもそれだけなら狸だって兎だって猿だっていいはず。インドに猿は居ないか?
狐の嫁入りとか狐火とか狐憑きとか、“生活に密着してるけどちょっとフシギ”な現象に使われるよね。
山伏には“山犬信仰”がある。これは狼。でもジャッカルが狐になるくらいだから、これもどっかで混合が起こったんじゃないかなぁ。それとも土着のものとうまーく融合したのかなぁ。
にせよ、散漫としてきてしまった。表とか使って、もっと整然と推移を追ってみたい。

日本の説話集やらに、良くも悪くも「狐が人を化かす」話は多い。民話も然り。「足の目茶目茶速い子供が居て、父親がいいねぇ、狐みたいだ。と言ってたら、その子は死んだ後、狐に生まれ変わった」って話があるらしい。出典が間違って書かれてたので調べ切れず、細かい内容は不明。知りたいなぁ。

*1:「犬に仏性は有る?」「無いよ」っていう、『絶対無』の話。

*2:乱暴に端折ると、弟子同士の言い争いのもとだった猫を師匠が殺しちゃう話

*3:福岡では人の禍福を予言し、病気を治すことをトリイダシ・野狐使いと云う。又、人に憑き、危害を及ぼすものの総称にも使われる…真逆じゃん

*4:式神。修験者の使役。竹筒=管の中に入れて飼う。味噌が好き

*5:1000歳。芸能にも登場する神の使い。白くて踊るのが好き。尾は4本らしい

*6:月がシンボル

*7:太陽=日がシンボル

*8:3000歳。通力自在の大神狐