下町ジンタ

フリーマーケットを冷やかしたりしながら川沿いの公園をずんずん歩く。
なにやら物悲しげなサックスが聞こえる。ストリートバンドかと思いきや、其処に居たのは一昔前のモダンボーイにモダンガール。早い話がじーさんばーさんだった。


演奏するは1930〜70年代の歌謡曲三橋美智也都はるみ美空ひばりetc.
ハーモニカ×2・サックス・アコースティックギター・スネアとハイファットシンバル・タンバリンの編成で、繰り広げるは“ちんどんバンド”。


スッタンすったんシャーン。肩から持ち上げて重力で打ち下ろす右手にはスティック。左手にはブラシ。ブラシ?…にしちゃぁナンカヘン。…目を凝らせばそれはフライ返しでありました。ナイス。
マイチェアに座ってゆったりと演奏。往年のジンタを彷彿とさせます。


道行く人に聞かせる為って感じではなく、碁が好きだから碁会所へ行くノリ。さしずめ「青空社交場」又は「生バンドのカラオケ場」。
でも見物客が増えるのは気分が良いらしく、多くなるとノリが違う。
見物人だとばかり思ってた人が歌いだす。飛び入りではなく、仲間らしい。


パート担当は固定も居るけど実に流動的。曲によって移動する。
打ち合わせなんて野暮なことはしない。ふらふらーっと動いていつのまにか曲が始まる。歌が始まる。疲れたり間違えたりするとしばらく休んじゃう。
ハーモニカとスネアで繋ぎ、切れ目無しで別の曲へ移る離れ業もやってのける。メドレーである。
それぞれがアバウトで、上手過ぎないのがまた良い。ゆるーいんだけれどツーカーな進行。
にしても、いやはやレパートリーの豊富なこと。ほとんどノンストップ。何時からやってたんだろ。そしていつまでやるんだろう。
この場所の常連らしいけれど、曜日が決まっているのかなぁ。


道行く年配者が嬉しそうに立ち止まる。川岸に住む人々が腰を下ろし腕を組んで目をつぶる。酔っ払ったおじさんがステップを踏む。
この場所には“若者”は似合わない。場違いですらある。
うら寂しくて垢抜けてないけど、ほのぼのする。クタビレテるけど暖かい。
数メートル離れた場所では、同じく懐メロのハーモニカ独奏。音が混じるのに場所を変えないのは競争意識なのか。
ガイジンさんも寄ってきたけど、首を振りながら行ってしまった。ワカンナイのかなぁ、あぁ、日本人でよかった。


軽く揺れた21:04