以前の職場で知り合ったN氏から最近よく電話が来る。
鬱発症で仕事をしておらず、70才を超えた両親を抱えての無収入はかなり厳しいらしい。
パソコンに滅法詳しく、なかなか便利な人だ。


今は不景気だ不景気だと云うので、不景気なのはお前さんだと云っておく。
そんなら、これからどんな企画が金になるかと云う話をする。
マニア気質なN氏。
趣味・知識の間口は狭いながら、理解度と情報網は広く、流行を読むのが好きらしい。
あれやこれやと“夢”を語る。今までのストックがかなり溜まっているらしく、出るわ出るわ。アイデアが尽きない。
こっちも釣られて、兄がやりたいと言ってる店用の企画が一つ出た。
人の波長に乗りやすいのも、役に立つものだ。


で。
そんだけ企画抱えてるのに勿体無ぇ。だらだら鬱やってるくらいなら、いっそのこと新しく事業を興しちまったらどうよ。となる。
店舗も構えず身一つでやるのなら、然るべき企業なり店舗なりに企画を売りに行くが良かろうし、
その企画が先の見通しの見込めるものなら、銀行なりへ持ちかけて融資を打診するもの良かろう。
金は無いがアイデアは有る。これは逆の状態より数段面白い。


「マニア受けより一般受け」「時代の波の掴み方」「客の金の落とし方」「集客力の相乗効果」
常に広い範囲にアンテナを張り、いわゆるニーズってやつを把握し、流行ってのをどう扱いこなすか。
言葉は陳腐だけれど、これがなかなかムツカシイ。
幸い、人脈も無い事は無いらしい。
一つ比較的に実現の可能性が高そうな、新しいタイプの美容院に焦点を定め、あーでもないこーでもないと少し細かく詰めてみる。
漠然としてた案を具体的にする過程ってのはワクワクするものだ。


何に対してにせよ、敏感にならなければ自己満足のオナニーになってしまう。
自分をいくら磨いても、外へ魅せる術を練らなければ、収益には結びつかない。
得意分野があるのは強みだ。好きなら尚更。
「好きな事を仕事にする」これに反対はしない。問題が生じても、乗り越え易いだろうし。問題だとすら気付かないかもしれない。



自分は今、「好きな事」を仕事にはしていない。逆に苦手な分野だ。
好きな事は趣味に留めるに限るな。と逃げているから。
自分は「好きな事」で躓いた時、「嫌いな事」「辛い事」に移行しやすいタイプらしい。
目標や、“こうあるべき”状態が鮮明であれば有るほど、自分がそれに程遠い事を思い知るから自己嫌悪してしまう。
苦手な分野なら、少しでも“上”に行かれたら素直に喜べる。自分に甘いんだ。


閑話休題



当然、現実はキビシイ。
企画が曖昧なら次々とボロが出てくるし、予想外の事だって湧いてくる。それらを片付けたり、再調整したりしていく内に立ち行かなくなってしまうかもしれない。
経験が浅い分、知らない事も多い。勘と勢いだけで持っていける範囲は高が知れているだろう。
まぁ、30代で家庭持って無いとすりゃ余裕は有るかな。