兄からの迎車要請もまだだろうし、風呂にでも入ってさっぱりすっかな。
と服を脱いだその時。
自宅の電話が鳴った。
…は?何事だ?兄ちゃんが事故ったか?親戚でも死んだか?


すっぽんぽんのまま急いで出る。


「もしもーし。○○ですが」
印刷所に勤めてた頃の人からだった。3年以上振りだわな。


手近に羽織るものも無く冷え切った部屋での世間話。
去年結婚したとの事。
実に実に一般的な会話をする。
─別のところに住んでたんだって?おじ様が話してた。電話したんだけど使われてないってメッセージが流れてたよ。あぁそう、実家へ戻ってたんだ。
─結婚は?子供は?うちはねぇ、まだいいかなって。旦那や義父母はは欲しいとか言うけど、作るのも産むのもこっちだしねぇ、
─へぇ、介護の仕事やってるの。知り合いにも病院で世話してる人が居るよ。泊りとかあるんだってね、大変ねぇ。
─あらぁ、親御さん亡くなったの。にしちゃ、しっかりしてるね。思い出したりする?そうかぁ、やっぱりね。面影とかあるでしょう。
いかん。体が震えてきた。さすがに風邪を引いてしまう。


「休みの日って決まってないんだけど、また電話でもしてよ。ご飯でも食べに行きましょうや」
あまりにもステロタイプな会話の為、地雷には至らず。
電話を切ってしばし考える。
こんなもんで良かったか。普通の会話に勤めてみたが。


彼女は典型的な普通の人で、一般的なものしか反応しない。こちらの現状を伝えた処で理解はすまい。
にしても寒かったー。
風呂場に走り、暖まること小一時間。


出てきたらば兄と職場のエム氏から電話とメールが。
おやま。タイミングが悪かったな。


夜勤をしているエム氏のメールは22時になっても職員と課長らが残って会議をしていて鬱陶しいとの内容。
ご愁傷様の旨を返信しておく。


兄は河岸を変えて飲みに行くらしい。
3時か。寝ようか、どうしようか。