別宅には非常な思い入れがある為荷物運びは自分の内面と相談しながらゆるゆるやりたかったのだが、車が無い事から不便だろうと半ば押し掛けで同僚が‘手伝い’に来て下さった。
引っ越し慣れしているから任せろと張り切る同僚の手際は確かに見事なもので、あれよあれよと云う間にテキパキと箱に詰め込まれ着々と同僚のバンに運ばれて行く。

期日も迫っておりのんびりしている場合ではなく自分だけでは埒が明かないのは百も承知なのだが、あまりのペースに内部調整が間に合わず呆然としてしまう。
置き場が無いからとかもう時間が遅いからとか何のかんのと言い訳し、中途で切り上げて夕食に連れ出し、そのままお引取り頂く。

助かった分の倍以上気疲れし、危惧通り不安定となる。更に売られた借りに対する苛つきが治まらない。
追い討ちを掛ける様に遺産処理を依頼している会計士から書類は揃ったかと電話が架かる。かてて加えて父親の知り合いから「亡くなったのを知らなくて」と弔問が来る。

……飽和した。寝る。

あぁそれなのに寝入りばな。先の同僚から電話。
自分のアパートも建て替えの為一時立ち退きになったと。
どうせならそっちへ住むのも良いかなだの、でも今の場所に未練がだの、他県である実家に戻ろうかなだの、話が二転三転し何をどうしたいのかさっぱり解らない。

勘弁してくれ。